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お寺スペース・リノベーション #2 「お寺×あかり」導入ドキュメント

前回、「お寺×あかり」の記事(リンク)で、LED照明を取り付け、見違えるように変化した妙海寺をご紹介したが、今回は実際の見積りや取り付け工事の内容などを、具体的な導入内容をご紹介する。

2018.05.08 TUE 10:00
構成 島田ゆかり

お寺に照明設計が必要な理由

ご自坊のあかりは現状、どのようなあかりだろうか。白色蛍光灯でまんべんなく明るくしているケース、電球でなんとなく温かみのあるあかりにしているケース、さまざまあるだろう。

空間の演出には「照明設計」という考え方がある。その空間で行う人の活動をより快適にするため、また、その空間の雰囲気をより魅力的に際立たせるため、「あかり」を使って計画していくものだ。では、お寺とはどんな空間で、何をよりよく見せるべきなのか。

まず場面(シーン)から考えると、お寺は葬儀や法事が行われる厳粛な場であり、悲しみを癒す場である。そして坐禅や瞑想など、自己と向き合う時間もある。さらには地域の人々が集う催しもある。人の喜怒哀楽の全てに寄り添える空間でなくてはならない。次に施設に目を向けると、ご本尊を中心に調度品や仏具が奥行きを強調するように配置され、智慧の輝きを表す金の装飾品も多い。荘厳な雰囲気が必要だ。

こうした特徴のあるお寺空間を格段に魅力化できるのが、この数年で飛躍的に進化したLEDを使った照明設計だ。

この上の写真は前回の記事(リンク)でもご紹介した妙海寺の、生まれ変わった金の装飾、および天蓋。これまで、在感のなかった天蓋が、LEDの照明設計により格段に際立ち、輝き始めた。

下の写真は、以前設置していたのは白色の蛍光灯。蛍光灯の光には拡散性があり、満遍なく全体を明るくするには有効だが、見せたいものを際立たせるメリハリのある照明設計には不向きだ。また、光の色が冷色系なので寒々しい印象を与えがちとも言える。

次の写真が新しく設置したLED照明。LEDは“光の指向性”が強い為、光に直進性があり、光の広がりを制御しやすいので、見せたいものを狙って照らすことができる。また、LEDは幅広いカラーバリエーションがあるため、意図する色で照明が可能だ。

妙海寺のケースでは、心が落ち着くろうそくに近い色温度のLEDをベースに、金色を際立たせる色温度のLEDが使用された。この金色を際立たせるLEDは、パナソニックが独自に開発したカラーオーダーメードシステムより、金に最適な光色を目指し、実験を重ねて生まれた。多くの寺院で金の装飾を美しく照らすことが期待される。

発注から納品まで

現在、お寺の照明設計を手掛けているパナソニック。たとえば金装飾や建物の木材等、異なる素材にもっとも適した光の色や、仏像への光のあて方、シーン別のあかりのつくり方など、これまでの知見をもとに、それぞれのお寺に合った照明設計の提案をしてくれる。

では実際に、どのようなフローであかりを変えていくのかご紹介しよう。

①ヒアリング
専門スタッフがお寺に訪問し、どのような空間にすることを望んでいるかをヒアリング。実際に御宝前を見ながら、シーンごとの照明設計のゴールイメージを相談し、共有する。妙海寺の場合は、使用予定のLEDライトをスタッフが持ち込み、実際に御宝前の一部をライティング。光の当たり具合や、光色の違いによる効果等の説明を受けた。

②照明設計図と見積りの提案 (1~2週間後)
ヒアリングをもとに設計図と見積りが上がってくる。こちらの図は、実際の妙海寺の御宝前の照明設計図。最上部がご本尊、下側が住職が座る場所だ。ぼんやりと黄色で表されているのが、照明を当てる場所。B、Cと表記されている▽の印がLEDライトの配置。ライトを段階的に設置して、光が強く当たる場所を大きく4カ所に分けていることがわかる。

右の写真は、左側2灯が図面のBで高演色のスポットライト、右側2灯が図面のCで金の装飾用のカラーオーダーメイドスポットである。

③発注、工事日の設定
照明機器の納品が1カ月ほどかかるため、照明設計から納品まで、最低2カ月ほどかかる。工事日は、まる2日あけられる日で設定。

④施工業者による現地調査
工事前の確認。配線を通すために屋根裏に上がったり、壁に穴をあける場合もあるので、細かく確認を。

⑤施工、調光(2日間)
工事はほぼ1日で終了。文化的価値の高いものが多い御宝前は、傷をつけないように慎重に行われる。2日目に照射角度や調光を調整し、完成。

見積もりに含まれるもの

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