寺子屋學シンポジウム 寺子屋學シンポジウム2018秋 開催レポート (第3部)
「寺子屋学シンポジウム2018秋」
2018年10月15日(月)
東京都港区 パナソニック汐留ビル 5Fホール
第3部 人の集うお寺を設備から考える
お寺に人が集まるには、講座やイベントなどの中身だけでなく、箱となる施設も重要です。単にお堂を新しくするということではなく、すでにあるものをより魅力的に見せるための照明や、安心してお参りいただくための安全向上も欠かせません。特に、長い歴史はお寺の魅力でもあると同時に、漏電などの危険をはらむ要素でもあります。
そこで、「防災対策」と「魅力度向上」という両面から、「人の集うお寺」をテーマにした、設備の事例についてお話がありました。お寺を預かる僧侶のみなさん、とても真剣に聞き入っていらっしゃいました。
テーマ① 防災対策:漏電による火災からお寺を守る
まずお話いただいたのは、お寺スペースアドバイザーとして活躍する、広瀬電工株式会社 地域コミュニティー推進部 加藤康克氏。
まず、お寺の火災事例についての説明からスタート。本堂が焼失し、重要文化財の木造一遍上人立像が焼失してしまったお寺や、仏像と過去帳を抱えていた住職のご遺体が発見された事例などが挙げられました。
また、お寺の火災はお寺だけの問題ではなく、周辺への延焼のおそれや、地域全体の魅力を失うことにもつながりかねません。
こうした火災のうち、配線危機の不具合などに起因する、いわゆる電気火災が原因の大きな割合を占め、合計するとコンロやたばこの火の不始末に続き、第3位を占めるに至っているそうです。
歴史あるお寺は、長い時を経ていることが魅力になりますが、施設の老朽化という点に目を向ければ、それが大きな悲劇を生む原因となる恐れもはらんでいるということに気付かされます。
劣化した照明のソケットや、子供が触れて感電の恐れがある、旧式のナイフスイッチ、安全基準を適合しない配線コードなど、思い当たる場合はぜひ点検・交換をお薦めいたします。
訪れたくなる魅力のための施設リノベーションに先駆け、真っ先に考えたいことです。
終始和やかなムードのお話の中にも、安全は何よりも優先して対策すべきこと、と身に刻まれる思いがします。
テーマ② 魅力度向上:LED照明による御宝前の魅力化
続いては、お寺をより魅力的に見せる、最新の照明技術についてのお話です。今回会場をお借りしているパナソニック株式会社のお寺スペースアドバイザー、吉塚奈月氏によるお話です。
今回はなんとも心強いことに、実際にパナソニックさんの手でお寺の照明をリノベーションされた、正榮山妙海寺の佐々木教道住職とともに、実際の施行事例を取りあげてのお話でした。
照明リノベーションのコンセプトともいえる「見える照明から 魅せる照明へ 」というキーワードがとても印象的。単に全体を明るく照らすのではなく、光のメリハリや照度差によって奥行きを生み出し、お寺の御宝前においては気持ちが御本尊に向かうようなパース感を生むこともできるのだそう。
御本尊や各種の宝物に使われる金色をより魅力的に見せる色味にも注目。一般的な照明に使われる電球色よりも、ろうそくの光に近い色味に調整した照明で、金色が最も美しく見える工夫も。色味によって、素材さえも違って見えるといいます。
また、照明により立体を適切に表す「モデリング」によっても、仏像の表情がより柔らかになって微笑みを演出したり、逆に明王像であれば威厳を強調したりといった違いを生み出すこともできます。
さらに、光が与える心理的効果を利用して、お通夜や葬儀の雰囲気に適した色味や、瞑想などを行うのに適した抑えめの光、掃除や地域の集いなどに適した明るく覚醒した気持ちを引き出す光など、目的に応じてリモコンで操作できるような施工も可能なのだそう。
施工にあたっては、御宝前に傷をつけないよう配慮するとともに、より魅力的に見える提案を行います。
写真の比較だけでもその差は明らかです!
引き続いて実施された、パナソニック展示ルーム見学会では実際にその差を目の当たりにする事ができました。照明の実例や防犯カメラ、太陽光発電など機器を見ながらの手厚いご説明に、僧侶のみなさんから、費用や施工の流れなど、次々に質問が飛び出します。
展示ルームは写真撮影不可のため、様子をお見せできないのが残念ですが、お考えの方はぜひパナソニック展示ルームに足を運んでみてはいかがでしょうか。
既に持っているものに光を当てることで、より輝かせる。仏教の教えにもつながるものを感じさせられるお話でした。
参考記事
連載:お寺スペース・リノベーション
「つながり」のはじまり
これで本日のプログラムは終了。引き続き、登壇者のみなさんや、シンポジウムご参加のみなさんとによる懇親会が開催されました。
寺子屋學で大切にしているのは「つながり」。さまざまな宗派の方が同席し、この日の気づきをシェアしたり、あるいは肩書きを脱ぎ捨てて、リラックスしたつながりが生まれました。
語る側・聞く側という区別なく、つながりが生まれた1日でした。ご参加いただいた僧侶や医師、企業、街のみなさんから、すでに新たなチャレンジが始まっているかもしれません。