検索

語り合おう。ひと、まち、お寺。

お寺のためのクラウドファンディング術 #2 クラウドファンディング挑戦僧侶に聞く、ぶっちゃけ大変だったこと

みなさん、こんにちは。
旅するおむすび屋 兼 クラウドファンディングキュレーターの菅本香菜です。

お寺でのクラウドファンディング活用に考える本連載。
前回はクラウドファンディングの基本についてお届けしました。

今回は、「お寺でクラウドファンディングを活用してみてどうだった?」ということについて、浄土宗 光琳寺の副住職 井上広法さんにお話を伺います。

広法さんは、2018年4月にクラウドファンディングを開始し、目標金額300,000円を大きく上回る836,000円の支援を集められました。
なぜ、成功することができたのか?そもそもなぜクラウドファンディングを実施しようと思われたのか?大変だったことは?など、プロジェクトの裏側について聞いていきます。

クラウドファンディングについて気になっている方はぜひご参考にされてみてください。

2019.08.23 FRI 10:57
執筆 菅本香菜
PROFILE

井上広法(いのうえ こうぼう)

宇都宮市光琳寺副住職。(一社)寺子屋ブッダ/プログラムディレクター・理事

1979年、宇都宮市生まれ。光琳寺副住職。佛教大学で浄土学を専攻したのち、東京学芸大学で臨床心理学を専攻。仏教と心理学の立場から現代人がより幸せに生きるヒントを伝える僧侶として活動している。2014年から、マインドフルネスをベースとしたワークショップ「お坊さんのハピネストレーニング」を開始。また、お坊さんバラエティ番組「ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系)の立ち上げに関わり、企画アドバイスを行うと共に、自らも同番組に出演。現在も各メディアで活躍中。お坊さんが答えるQ&Aサービスhasunohaを企画運営。著書に「心理学を学んだお坊さんの幸せに満たされる練習」(永岡書店)がある。

PROFILE

菅本香菜(すがもと かな)

旅するおむすび屋 / 株式会社CAMPFIRE LOCAL・FOOD担当

1991年、福岡県北九州市出身。熊本大学卒業後、不動産会社での営業を経て、食べものつき情報誌『くまもと食べる通信』の副編集長として活動。熊本震災後に上京し株式会社CAMPFIREに転職、LOCAL・FOOD担当として全国各地のクラウドファンディングプロジェクトをサポートしながら日本の魅力発信に努める。本業の傍ら2017年5月に、旅するおむすび屋『むすんでひらいて』プロジェクトを立ち上げた。2019年3月に独立。フリーランスとして、食に関わるイベント企画・運営やライター、クラウドファンディングサポート等を手がける。

メディア出演 : NHK「人生デザインU-29」など

菅本

クラウドファンディングに関心を持たれたのは何故でしょうか?

井上

お寺では、本堂の建て替えの際などに檀家さんや門徒さんから寄付をいただいてきた訳ですけど、そのようなお寺の寄付活動を見直していきたいという思いが前々からありました。

寄付を強制することなく、また、檀家さんや門徒さんからのみの寄付に限らず、“支援したい人が支援する”という美しい形をとれないかと考えていたときに、クラウドファンディングについて知り、ずっと気になっていました。

菅本

実際にクラウドファンディングに踏み切ったキッカケと、プロジェクト内容について教えてください。

井上

私たちのお寺では、「朝活ラヂヲ体操&朝まいり」を始め地域に開いた活動を続けてきました。だいぶお寺と街の人との距離が近づいてきたので、そろそろ街の方と一緒に何か挑戦してみたいと思うようになりました。
じゃあ、どんな挑戦をするか?街の人とお寺とが共に課題として認識していたのが「もみじ」だったんです。
どういうことかと言いますと、光琳寺は宇都宮市にある小さな商店街『もみじ通り』の突き当たりにあるのですが、もともとこの通りはシャッター商店街で廃れてしまっていたんです。それが、若者が商店街に新しいお店を出していったことなどにより、盛り上がりを取り戻していって、全国的にも注目されるようになっていきました。
ところが、『もみじ通り』という名の通りに、もみじが無い。
せっかくもみじ通りという名も広まってきたので、「名実ともに『もみじ通り』となるようにもみじを植えたい」という街の方の声もあり、立ち上げたのが今回のプロジェクトです。

また、クラウドファンディングを始めるにあたって最後のひと押しになったのは、クラウドファンディングのプラットフォームを運営する『CAMPFIRE』の方に直接会って話を聞いた際に、サポート体制がしっかりしていると感じられた安心感も大きかったですね。

菅本

クラウドファンディングの準備はスムーズに進みましたか?

井上

リターンの準備には苦戦しましたね。
ものを作って販売するというクラウドファンディングでもないので、どんな“お返し”ができるか迷いました。

結果的に私は、街の方々とコラボレーションさせてもらって、地元飲食店に協力を得て餃子ギフトコースを用意したり、デザイナーさんに協力を得てオリジナルご朱印帳を用意したりして、リターンを準備していきました。
街とつながることでできたコミュニティが、クラウドファンディングの準備段階から活きていました。

菅本

クラウドファンディング公開までに工夫した点があれば教えてください。

井上

事前の告知には力を入れましたね。
地元のメディアに直接声をかけたり、SNSでクラウドファンディングに挑戦することについて事前にお知らせしたり深い関わりのある方には、LINEで直接ご連絡をして挑戦に対する想いとクラウドファンディング開始日時をお伝えしたりしました。

菅本

クラウドファンディングの公開後、みなさんからの反応はいかがでしたか?

井上

まず、LINEで直接お声がけしていた方を中心にすぐに支援をしてくださって、30万円の目標金額は2ー3時間でクリアしました。

初めてのクラウドファンディングですし、今後も活用していきたかったので、必ず成功させたかったこともあり30万に設定しましたが、これはやりたいことの一部を実行するための金額でしたので、もう少し目標を上げておくべきだったと反省しました。
達成後は「もう資金集まってるから支援はいいよね」という声もありましたので。
今だったら100万円に設定しますね(笑)

菅本

想像以上に大変だった点があれば教えてください。

井上

達成した後のリターン発送に時間がかかりましたね。1週間くらいかかったと思います。
お寺の行事と被ってしまうと大変なのでここは意識した方が良いですね。

菅本

クラウドファンディングを行ったからこそ生まれた人との繋がりなど何かエピソードがあれば教えてください

井上

お寺ならではかもしれないですが、クラウドファンディング終了後もみじを植えたことが新聞に取り上げられ、それを見て資金集めについて知った方が何名か直接お寺に資金を渡しにきてくれました。

また、「光琳寺はクラウドファンディングを使って、街のために動いてくれるお寺」だと認識してもらえるようになり、感謝の言葉を伝えてくださる方がいらっしゃることもあります。それは嬉しいですね。

菅本

今後挑戦してみたいことはありますか?

井上

今回クラウドファンディングに挑戦して感じたのは、クラウドファンディングを立ち上げることが、お寺にとっての新しい修行だということです。
今までにお寺の価値を感じたことのない人に価値を感じてもらうことを考えないと、ファンディグできない。
街の人に価値を感じてもらえるお寺の取り組みとはどういうことなのか?それを考える修行として、2年に1回は今後もクラウドファディングをしたいと考えています。
そう決めてからは、日々の意識も変わりましたね。「こんなことすると面白いんじゃないか」というアンテナが立つようになりました。

次は、新進気鋭の日本画家アーティストさんにお閻魔様の絵を書いてほしいと考えています。

菅本

クラウドファンディングに関心を持たれている方に一言お願いします!

井上

クラウドファンディングは『お布施2.0』になると感じています。
これからのお寺が社会にどう価値を提供し、どうお金をいただいていくのか。
クラウドファンディングの考え方はお寺にとってマストに変わっていくのではないかと思います。
どんな小さなプロジェクトでも、やってみると感覚を掴めますから、ぜひ挑戦されてみてください。

いかがでしたでしょうか。
お寺でのクラウドファンディングの活用事例として、光琳寺の井上広法さんからお話しを伺いました。
大切なポイントとしては、クラウドファンディングに限らず、いかにお寺と社会との接点を増やしていくかということ。そして、そこで発揮できるお寺の価値について考えていくことなのではないかと感じました。
「これまでそんなに街の方を巻き込んだ取り組みをしていない」という方もいらっしゃるかと思いますが、クラウドファンディングをすること自体が、社会と接点をつくるひとつのキッカケとなるはずです。
難しく考えすぎず、日常にあるお寺と街との共通課題など、身近ところからクラウドファンディングを活用するのも良いかと思います。
ぜひ参考になさってください。

次回は、クラウドファンディングの始め方について取り上げます。お楽しみに!

記事ラインナップ

#1 なぜ、今お寺がクラウドファンディングなのか?成功事例から見える3つのこと
#2 クラウドファンディング挑戦僧侶に聞く、ぶっちゃけ大変だったこと(本記事)
#3 クラウドファンディング実践編、プロジェクトの始め方
#4 クラウドファンディング実践編、プロジェクトの広め方
#5 クラウドファンディング実践編、プロジェクト終了後の動き方

※ タイトルは変更となる場合があります

関連記事

姉妹サイト まちのお寺の学校おすすめイベント