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場づくりを成功させるための5つの鍵 #3 また行きたいと思える場をつくるには

2019.07.21 SUN 16:59
執筆 舟之川聖子 構成 増山かおり
PROFILE

舟之川聖子(ふなのかわ せいこ)

鑑賞対話ファシリテーター、場づくりコンサルタント

滋賀県生まれ。東京都在住。一人ひとりとの関係や交流を大切にする場のデザインや場をつくりたい人のサポートをしている。 2011年より場づくりを学び、ワークショップデザインやファシリテーションのプログラム開発、講座講師、ブッククラブや百人一首のコミュニティ運営に携わる。舞台や展覧会の鑑賞対話会、映画上映会、オンライン読書会、読み聞かせ、一箱古本市、ポッドキャストなどの活動を通して、多種多様な場の可能性を日々探求中。
web: http://hitotobi.strikingly.com/
note: https://note.mu/hitotobi
twitter: https://twitter.com/seikofunanok

▲ 漫画「あさきゆめみし」を語る会

■また行きたくなる場に共通すること

いざ場を開いてみると、「また参加してもらえるだろうか」と不安になったり、「2回目を開いてみたけれど、前回来てくれた人があまり集まらなかったな」といった残念な気持ちを抱いたりする方も多いかもしれません。
参加者のみなさんは、家庭、仕事、趣味などの合間を縫って、予定を調整し、時間やお金をかけてお寺に足を運びます。そんな忙しい日々の中、また足を運びたくなる場とはどんな場でしょうか。今まで携わった場の中から、わたしは次のような共通性を感じています。

・会いたい人に会える場
何を行うか(コンテンツ)だけでなく、その場にどんな人がいるかによって、また足を運びたいかどうかは変わります。ご住職やご家族、主催者や講師の魅力はもちろんですが、それだけでなく、「前回参加していた人が来るなら行きたい」あるいは「新しい人に出会えるかもしれない」といった思いからリピートする人も多いのです。

・自力でセッティングするのが難しい場
参加者個人で企画するのが難しい、他にやっているところが見つけられない場なら、それもリピートする理由になります。例えば、以前知人が主催した「親子での山歩き」というイベントもそのひとつです。山歩きに慣れていない人と2歳以上のお子さんが、山歩きの専門家と一緒に山登りをするという企画は、ほかではできない貴重な体験であるうえに、個人の人脈や知識ではなかなかつくれない機会として、一旦受付を開始するとすぐに満席になってしまう人気ぶりです。このような場に人は集まりやすいのです。

・興味のある場所で開催されている場
特定のエリアや街、建物などに興味があり、その場所に行きたいという気持ちも十分な動機になります。お寺という聖域に足を踏み入れて、心静かなひとときを過ごしたり、非日常感を味わいたい方は多いでしょう。お参りをしたことはあっても本堂に入るのは初めてだという方にとっても、お寺で開かれる場は魅力的です。和室のないお宅に住む方も多い今、畳に触れるだけでも価値があります。お寺そのものが、さきほどお伝えした「自力でセッティングするのが難しい場」ともいえますよね。

ほかにも、興味のある分野の知識や経験が得られる、友達ができる、自分らしくいられる、といったことも繰り返し足を運ぶ理由になります。

▲「沈没家族でゆるっと話そう」(シネマ ・チュプキ・タバタ)

■また行きたくなる場づくりのために

ここまでお伝えしたような場の中身のほか、伝えかたを工夫することによって、また足を運びたくなる場をつくることもできます。

・場を継続する意思を伝える
主催者側が、場を続けて開催していくという意思をはっきりと言葉で伝えるのも重要です。例えば坐禅の場合、一回だけでは足が痺れたり、頭がぼーっとするだけで終わってしまう場合もありますが、何度も通ううちにだんだんと気持ちが整っていったりしますよね。このように「一回限りで終わる場ではなく、何回か体験することに意味がある」とか、「この街に住んでいる◎◎な状況の人が定期的に顔を合わせることによって◎◎を実現したい」など、ご自身がなぜ場を開いたのかという思いも含めて、継続する意図を伝える必要があるのです。そうすることで、参加者側にも共感が芽生え、「ひらいている人がそんな思いでやっているなら継続して行ってみよう」という気持ちが生まれやすくなります。
場の冒頭だけでなく、1日のコンテンツを終えたあとにも、あらためてその思いを伝えてみてください。

・今後の開催についてお知らせする
ホームページやメール、チラシなど、今後の場の情報を定期的に確認できる具体的な方法もお伝えしましょう。
次回の開催日の話をするのもよい方法です。具体的な日程が決まっていれば、参加者同士で「次回いらっしゃいます?」という会話が生まれますし、少人数だったりしたらその場で予定を聞くのも手です。「こういう場があるとしたら、みなさんは何曜日がご都合いいでしょうか?」といった具合に意見を聞くのも、また集まりやすい場をつくる工夫です。

■終わったあとにも「場づくり」は続く

・サンキューメールを送る
場が終わったあとに送るサンキューメールは、お礼と共に主催者の気持ちを伝えるとてもよいツールです。

① 場を開いてみた感想(自分の思いや、来場者の様子など)
② 「またお会いできたら嬉しいです」などのメッセージ
③ 署名欄:名前、連絡先、ホームページなどのURL、次回の申込方法
などを入れて送ります。

グループワークを行った場合、他のグループでどのようなやり取りがあったかを紹介するのもおすすめです。参加者の方が直接体験していないことも伝え、全体像を知ってもらうことで、行ってよかったなという気持ちをあらためて味わうことができ、また行きたいという気持ちにつながっていきます。
また、仮に場で何かうまくいかないことがあったとしても、「事前に想像されていた内容と違ったらごめんなさい」というような心のこもったメッセージによって挽回できることもあります。場を主催する守人(もりびと)の人となりを感じることで、この人にまた会いたいなと参加者が思うこともあるのです。

・場を離れたあとにも続くつながりを
前回も少しお伝えしましたが、場が終わった後に参加できる継続的なコミュニティづくりも有効です。SNSのグループ機能などを活用したオンラインコミュニティや参加者全員に届くメーリングリストを作ることで、参加者同士のつながりができ、思い出して「また会いたい」という気持ちからリピート参加の可能性も出てきます。

■集まらないことを怖れすぎない

このようにさまざまな方法で「また行きたい」と思える場を目指しても、うまくいかないことはあります。でも、たとえ一人しか来なかったとしても、それは立派な「場」です。来た人が何人であっても、その方にとってよい体験になれれば、今度はその方が場の魅力を広めてくれます。最初から何十人もの参加者を目指したり、満席を狙ったりしなくてかまいません。わたしがかつて主催した読書会も、1年後になってようやく満席近くにまでなりましたが、最初は2人からのスタートでした。初めて開いた場がうまくいかなかったときに、「こういう場はこの地域では求められていないんだ」とか「内容がよくなかったから来なくなってしまったのかな」と一方的に考えてやめてしまうのは、とてももったいないことです。まずは2回、3回とやってみる。そしてその都度丁寧にふりかえりつつ、「ここのお寺でこんなことをやっているんだ!」と認知されるよう、オンラインでも、リアルで会う人にも伝えていきましょう。それでも見込みがなさそうなら、また別のテーマで場をひらいてみる。
そもそも、人が何かの場に参加する動機には「一度行って確かめてみたい」という、継続を意図しないものもあります。そういう方に、一度のよい場を提供できるのも素晴らしいことです。長く続けることが大事だと思いすぎないのも、場づくりを継続するうえで大切なことだと感じています。

記事ラインナップ

#0 introduction
#1 なぜわたしは場をつくるのか
#1.5 自分の「本質」から、場はスタートする
#2 交流とつながりは場の設計が肝心
#3 また行きたい!と思える場をつくるには (本記事)
#4 分かち合うための表現を鍛えよう
#5 安心、安全な場のために知っておきたいリスクの話

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